胸椎・胸郭の改善

ここでは、主に胸郭や胸椎、頸部周囲にアプローチしていきます

ヒトの脊柱には運動する上での役割があり、大まかではありますが、腰椎(腹部・腰部)と頸椎(首周り)には安定性が重要視され、胸椎(胸周り)には可動性が求められます。

 

猫背などの姿勢不良は、この安定性と可動性の役割が逆転しているケースが多く、胸椎が固く、腰椎が動きすぎている(安定性が低下)ことがほとんどです。なので、胸椎・胸郭の可動性を向上させて猫背や出っ張り頭を改善するには、呼吸の基礎適応、さらに腹部・骨盤の安定性が土台として獲得できていることが必須となります。

シセナビフローチャートでは以下に位置します。

後の頸部や頭部、肩甲骨などの改善には必須のカテゴリーです。

期待できる効果

改善する姿勢不良の特徴は、猫背・出っ張り頭、期待される効果は、肋骨の締まり・デコルテの拡張・首長効果・胸郭サイズの適正化です。※肋骨の締まりには呼吸の基礎・呼吸の適応が必須です。

 

エクササイズ

上半身の姿勢評価、動作評価でチェックが付いた方には是非行なって頂きたいです。

エクササイズの構成は胸椎・胸郭を動きやすくするための「胸郭コンディショニング」と、「エクササイズ①~⑫」で成り立ち、エクササイズは①~⑫にかけて強度もしくは難易度が上がっていきます。⑫までのエクササイズを修得できたら胸椎の動きは問題ないでしょう。

ですが胸郭の歪みが強いとエクササイズでの感覚が理解できてもそれを日頃から維持するのは難しいので、エクササイズの前に普段から頻繁にコンディショニングをしておくことをお勧めします。

上記のような「胸郭の後傾」や「肋骨の外旋」が顕著に見られる方はコンディショニングや呼吸の基礎や適応での呼吸エクササイズをちゃんと獲得しておく必要があります。

また、胸椎や胸郭は姿勢不良によって固くなりやすい部位でもあります。パッと見でも猫背が顕著に見られる方はエクササイズとは別に胸椎と胸郭をほぐしておくとエクササイズを進めやすくなります。特にエクササイズの前に取り入れておくと良いでしょう。

胸郭コンディショニングはこちらから

  胸郭コンディショニング  

では順にエクササイズを見ていきましょう。

エクササイズ① スフィンクス

エクササイズ② キャットストレッチ

エクササイズ③ ソラシックEX

エクササイズ④ クォータースワン

エクササイズ⑤ ハーフスワン

エクササイズ⑥ スワン

エクササイズ⑦ ネックブリッジ

エクササイズ⑧ ロングシートロールアップ

エクササイズ⑨ OHフルスクワット

エクササイズ⑩ シッティングOH

エクササイズ⑪ オーバーヘッドツイスト

エクササイズ⑫ FSリーチングツイスト

エクササイズ⑬ オールフォーツイスト

 

エクササイズの構成と考察

美姿勢を確保する、ボディラインを整える上で、胸椎の可動性と胸郭のポジショニングは必ず整える必要があります。

ここにエラーが強いと、くびれの喪失、巻き肩、二の腕のたるみ、など女性の悩みの代表例に繋がる影響が強くなります。胸椎・胸郭が固くなった方のほとんどは代償として腰椎を過剰に使ったり、頸部で代償します。なのでまずは「腰椎が動きにくいポジション」を確保してから胸椎を動かして、「胸椎が動く感覚」を身体に入力します。

エクササイズ①の スフィンクス では股関節しっかり曲げることで腰椎は反るどころか丸まったポジションになるので、胸椎のみを動かすには最適なエクササイズとなります。

スフィンクスでの腰椎のポジションは、呼吸の基礎のエクササイズ②チャイルドポーズとほぼ同じです。呼吸が疎かで腰椎が固いままならスフィンクスでも厳しいかもしれません。呼吸をしっかり獲得してください。

スフィンクスに腕の動きをプラスして広背筋のストレッチも兼ねているのが、次の キャットストレッチ です。広背筋の緊張がある方は非常に多く、キャットストレッチで胸椎が締まる感覚と広背筋のストレッチ(脇腹から腕にかけての伸び)を感じれるとOKです。

ここからは徐々に腰椎の動きの制限も徐々に解除して共同で動かせる感覚を入れていきます。最初は ソラシックエクステンション を行ないます。スフィンクスよりは少し腰が反れてしまいますが、それでも少し制限がかかるので腰には優しいエクササイズです。

次からの「スワン」シリーズからは、どんどん腰が反れてしまうので腹部の安定と、胸椎の動きの感覚をしっかり意識しないといけません。

スワンの最初は、 クォータースワン です。本来のスワンの4分の1程度の胸椎伸展を行ないます。腰椎も共同で伸展が入りますが、呼吸の安定力があって腹部をしっかり締まられれば問題なく感覚が分かると思います。

次は2分の1程度伸展させる ハーフスワン です。この辺りから腰の反りが強い方は注意が必要で、腰痛持ちの方は特に気を付けて行ないましょう。

スワンの最後は文字通り スワン です。ピラティスでは定番エクササイズですが、いきなり行なって正確に行なうのはレベルの高い種目です。団体によっても多少のポジショニングの違いはあるものの、狙う効果は同じです。

スワンまでの伸展の感覚ができてくれば、 ネックブリッジ で胸椎の伸展感覚に対して少し負荷をかけてキープ力を向上させましょう。

通常のスワンで胸椎の伸展感覚がしっかり獲得できていれば、この先のエクササイズも順調に進められるはずです。

ここからは、「胸椎がしっかり動く」ことを前提とした、胸椎と他の関節の連動などを行なっていき、余計な代償が起こらないように身体をコントロールしていきます。

エクササイズ⑧の ロングシートロールアップ ではキープするのではなく動きの中で胸椎の感覚を確認します。ポジショニングとしてはスフィンクスなどと同様で腰椎が反れない位置から、頸椎→胸椎→腰椎と順に動かして、脊柱がまんべんなく順に、かつ、分離しての動きを獲得します。

次の OHフルスクワット では、股関節以下の下半身の動きと協調させます。「股関節の可動制限=腰椎の代償」となることが多く、股関節を含む腹部周りと胸椎周りが別で動く感覚を鍛えるにはとてもお勧めエクササイズです。

ここまで進められれば、腰椎は丸めたりもせず、呼吸などで獲得した腹部の安定をしっかり使って腹部と骨盤はニュートラルを確保したままで、胸椎以上肩甲骨までしっかり使う シッティングオーバーヘッド でより胸椎の動きを鍛えます。腕の動きは胸椎の可動性が低いと必然的に肩甲骨も動きが制限されるので、当然腕の可動域(肩の可動域)も狭くなり、肩の障害の要因になりえます。胸椎の動き→肩甲骨の動き→腕(肩)の動きと連動させましょう。

上半身の連動の中で胸椎の動きを理解できたら、そのままさらに脊柱の回旋を入れる オーバーヘッドツイスト を行なうことで、胸椎背部の筋肉の左右別に効かせることで、反り腰になりやすい捻る動作でも的確に胸椎を働かせます。左右差がある人は多いので、感覚が分かりにくい側があれば、少し多めに行ないましょう。

ここからは応用となり、 FSリーチングツイスト では、フルスクワットポジションで腕のリーチングと回旋を同時に行なうことで片側の胸背部の締まりと、対側の肋骨(腹筋)の締まりを促します。この胸椎の動きは、スポーツなどでも必須であり、肋骨の締まりと胸椎の動きをも促せるので、ウエストの締まりやくびれ作りでも非常に役立ちます。

最後は、胸椎の回旋動作に、負荷をかけてもブレないよう正確に動かす オールフォーツイスト を行なって仕上げです。床を押す肩甲骨の安定性と腹筋の感覚がしっかり入りながら、胸椎の動きを行なうことで、エラーの出やすい回旋動作の獲得に特化します。負荷もそれなりに入り、骨盤の位置もブレやすいのでこのポジションで正確に胸椎のコントロールができたらほぼ問題ないでしょう。

オールフォーツイストまでしっかり感覚が分かれば 頸部・頭位の改善 に進みましょう。

 

まとめ

このページで得たい効果は、胸椎と腰椎の分離です。

腰椎は安定性、胸椎は可動性が重視されるため、腰椎を不必要に動かさずに胸椎が動作することが大事です。猫背や反り腰を含む多くの姿勢不良はこの役割が逆転しています。

このパートでのエクササイズは腰椎の安定性を確保するためにまずは腰椎が動きにくい姿勢を保ち、胸椎を動かす感覚を掴みます。(胸郭コンディショニング)

まずは徐々に腰椎が動きにくい状況を作ってから胸椎を動かすエクササイズを行なっていきます。そこから徐々に腰椎が動きやすい環境でも腰椎ではなく胸椎を動かすようにエクササイズを進めていきます。(エクササイズ①~⑦)

胸椎の感覚がしっかり分かってくれば、胸椎のへの負荷の上昇難易度の向上感覚の向上など(エクササイズ⑧~⑬)あらゆる状況に対応して、胸椎の感覚を鋭くしていきます。

このプロセスで動きが獲得できれば、腰椎の安定性を保ったまま胸椎の動きの獲得に役立ちます。腹部・胸郭・胸椎と安定性が向上してきたら、次は脊柱の上位に位置する頸部や頭部の安定性です。